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Favonio~春の風~ 

2014, 07. 08 (Tue) 21:17

 いろんなことが落ち着いたアルには笑っていてほしいなと思います。ほんとーにいい子だからアルは!
 CP的にはモドアルなんだけど、今はアルのお話が書きたいです(笑)
Favonio~春の風~
 フロリアスの祭りを数日後にひかえて城下は活気に満ちていた。一年前の同じ時期と違い、アルの治世は落ち着いている。大きな内乱を二つ、自ら出陣して平定させたという実績はやはり大きい。しかも先王ウーゼルと違い流される血の少なさが、民を安堵させた。それがアルに対する信頼となり、形となったのが今回の祭りの賑わいだ。
 戦いに巻き込まれて、流される血は兵や騎士だけではない。流される血が少ないことは民にとってはとても喜ばしいことだ。
  そして民というのは腹の探り合いをしなくてはならない諸侯などよりも明確にアルの功績をこうした形で讃えてくれる。
 だからだろう、昨年に比べて城下は多くの人々で埋め尽くされていた。
「すごい人……」
 散歩という名目の視察をしながら呆然と呟いたアルの後ろでクスクスと笑いを洩らすのは、モードレッドと筆頭騎士であるランスロットだ。
「これも君が頑張ってきた成果だと思うよ、姫王」
「そうだな。見ればずいぶん他国のものが来ているようだな。人が行きかう国は潤う。訪れた者がこのブリテンのことを安心して過ごせると話してくれることによってさらに人が増える。それが国を守る盾となることだろう」
「固いよ、ランスロット。今はバートランドの授業時間じゃないんだからさ。それに我らが姫王は広場の方へ行きたくてうずうずしているみたいだけど」
「え、ちが、……」
 慌てて否定するアルの顔は耳まで赤い。それは姫王など呼ばれるときよりも幼く愛らしかった。
「……ッ!」
「あはは。否定してもすぐわかるから、アル。ランスロット、行こう」
「ふ、二人とも! 違うって、言っているのに……」
 これではまるで子どものようだ。でも実は心がうきうきしてたまらないのだ。あちらこちらから聞こえてくる楽しげな笑い声。聞いたことのない旋律はどこの国のものだろう。そんな気持ちは二人に筒抜けだったようで、ランスロットもモードレッドも互いに顔を見合わせると柔らかな笑みを浮かべて、自らの剣を捧げた姫王の願いを叶えるために広場に向って歩き始めた。
 他国の人間が多くみられるということは、その国が豊かで安全であるということを代弁しているようなものだ、そうバートランドが言っていたことを思い出す。いつまでもこうでありますようにと、アルは祈るような思いでその光景を見つめていた。
 それでも心は浮き立つ。ここまで漂う甘い香りはどこかで菓子で焼いているのだろうか? 見たこともない果物やものが広がった露店の店主はどこの国からやってきたのだろう?
 広場に向いながら見慣れない衣服に身を包んだ人々の姿を大きな紫水晶のような瞳でキラキラと見つめるアルに二人の騎士はもう一度顔を見合わせて微笑んだ。
 春の風が吹く。アルの光り輝く髪を靡かせながら……。
「ねぇ、ランスロット、モードレッド! 私ね、こんな景色をいつまでも見ていたいの」
 楽しそうに笑いあう人々の姿にアルが満面の笑みを浮かべて、本当に嬉しそうに二人の騎士に声をかけた。
「あゝ、そうだな」
「そうだね、春の女神がまるでこのキャメロットを祝福しているみたいだ」
 ランスロットが、モードレッドが静かに応えを返した。
 戦のない国。誰も泣かない国。
 アルが目指している国が小さな姿を現し始めた春の一日だった。
Fin
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