FC2ブログ

小夜啼鳥 

2014, 10. 21 (Tue) 20:56

 先日UPしました鳥籠END後のSSで孟徳さんVerが書きたくて(^^ゞ
丞相、病んでます。展開も暗くて話も短いです。それでもいいという太っ腹な方はどうぞ。危険信号を感じた方は、ここでブラウザを閉じてくださいね。
小夜啼鳥

豪奢な鳥籠にいるのは一羽の小鳥。
 籠の外にいる時は綺麗な声で囀っていたのに、どこにも飛んで行かないように鳥籠に閉じ込めたら、鳥は囀ることを止めてしまった。
 信じることが裏切りと同じ言葉になってしまったあの日から、人としての自分は壊れてしまっていて、それでもこの怨阻に満ちた世界で生きているのは丞相として息をしている自分が望むものがあるからなのだろうと、他人事のように孟徳は思う。
 病んでいるのはこの身なのか、この心なのか、自分にはわからない。
 信じたばかりに大切なものを失って、信じることができなくて愛しいものを失って……。
「なんで俺のまわりはこんなに暗いのかな、花ちゃん」
 呟くのは閉じ込めた小鳥への問い掛け。けれども、鳥籠からはなんの囀りも返ってこない。
 鳥籠に閉じ込めたのは本当に一羽の鳥なのだろうか、ふと思う。
 囀ることもしない。羽も切り落として空を飛ぶことも叶わない。それをまだ鳥と呼ぶことができるのだろうか。
 あの本がまだ小鳥の手元にあった頃に聞いた話にナイチンゲールというのがあった。自分もあの物語の皇帝のように愚かな過ちを犯しているのだろう。
 孟徳は生きて優しい歌を歌う小鳥と金銀で飾り立てた細工物の小鳥を天秤にかけて、生きた鳥を細工物に変えてしまったのだろうか。
 たしか、あの話の皇帝は失った心優しい小鳥を再び取り戻すことができるけれど、そんなことを望むことなんてもうできないのかもしれない。
 だって――。
 大切な小鳥はもう囀ることはない。
 大切な小鳥はもう空を飛ぶこともない。
 孟徳が羽を切り落としてしまったから。
 小鳥はどこの空の下へも行くことなんてできない。
 それに孟徳が見上げる空はいつだって緋色に染まっていて、血の匂いが満ちていて、怨阻の声が聞こえている。
 そんな空の下へどうして放つことなど出来るものか。
 足には銀の鎖を、豪奢な鳥籠には金の鍵をかけよう。鳥籠は小鳥にふさわしい玉で飾ろう。珂、珊瑚。それとも瑠璃がいいだろうか。いや血のように紅い玫瑰がいい。
「そうだ、玫瑰が君にはふさわしいね」
 元譲の軍をその才で壊滅に追い込んだ小さな小鳥。その小鳥が舞い降りたのは戦場だ。舞い降りた小鳥の策で万という数の兵士の血が大地にしみ込んだ。ならば、その白かった羽の代わりに身を覆うのは紅い玫瑰の衣。籠も玫瑰で飾ろう。
「これで同じものを見てくれるかな」
 願っていたのは、めでたし、めでたしでおしまいになる物語だった。
 でも、この物語がどんな風に終わりを告げるのか、なんてわからない。
「お話の最後でみんな終わってしまえばいいのにね」
 そう、囀ってくれていた物語では末長く二人は幸せに暮らしましたと終わりを告げるけれど、そんな子供だましなんて意味はない。
 そう、お話のおしまいはこうなればいい。
「そうだよ。お話の終わりはこれがいい。そうして二人は幸せそうに死んでいきました」
―了―

 前回書いた花ちゃんサイドの孟徳さんVerを、新井素子さんの『いつか猫になる日まで』から思いついて書きました。(ご存知の方はいるかしら?)
 主人公がお伽噺のハッピイエンドの後に二人とも石でも落ちて死んでしまわなければ、本当のハッピイエンドにならないという少し屈折した性格の女の子で、こんな考え方もあるのかと思った作品です。今も好きですが。
 タイトルにも使わせてもらっている『ナイチンゲール』はアンデルセンの童話から貰っています。
 次はSSLの女子会か、プリアサのALLコメディがUP出来ればと思っています。
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント