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秋澄む 

2014, 11. 09 (Sun) 21:16

 現在進行形で書いているのは、シリアスの連載の続きです。これは思いついただけのもので短いです。秋深しという言葉があるように秋澄みという言葉もあります。きれいな言葉で私は大好きなんです。
秋澄む

 木々が衣替えをする季節。空は高く碧くなり、その向こうにいる人たちを思わせる。
 その身に空を纏っていた人たちをいまも思う人はいてくれるだろうか。
 はぁと吐く息が白くたなびく。秋も深まり、朝晩が冷え込むようになった。
 火鉢に火を入れて、ほんの少しだけ温まろう。心まで凍えてしまわないように。
―独りいることが寒さを感じさせるのか、忘れることができないこと、あの懐かしい日々を思い出して火鉢にあたりたいのか。
 しんとした深い寒さが続く京の都でも、部屋に皆で集まってたわいもない話をして、笑い合っていれば、寒さなど感じなかった。
 藤堂の声。それをからかう永倉の声。二人を嗜める原田の声。面白がって、騒ぎを大きくするような言葉を言いだすのは沖田だ。冷静に周囲を観察して、さりげなく鋭い一言を洩らすのは斎藤。そして、その騒ぎをおしまいにするのは決まっている土方の怒鳴り声だ。
 千鶴の唇に笑みが浮かんだ。哀しい思いだけじゃない。こんな思いも残してくれた。
 これを秋思というのだろうか、井戸から汲んだ水が入った桶を持ちあげると千鶴は思う。
 戦は終わった。江戸は東京府と名前を変えて、急速に変わって行く。その速さに千鶴は取り残されるばかりだ。牛鍋にあいすくりん。木村屋のあんぱん。そんな高価なものを食べたいとも、口にしたいとも思わない。外国人居留区へ行きたいとも思うこともない。
 繰り返す日々は変わりなんてなくて、あるとすれば、そこにあった喧騒が消えてしまっただけ。
 取り残されたとは思っていない。
 彼らを追うことも考えない。
 生きて、彼らのことを覚えているのが千鶴の役目。
 江戸はもう遠い日々。それが遠くならないように、こうして日々を繰り返す。
 秋の空に、あの背中を思って……。


ちとまめ知識
当時の東京都は東京府でしたので間違いじゃないですよ。千鶴ちゃんが独り残って、ちー様と行くことも選ばなかったら、こんな日々を過ごすのかなと……。
毎日、雨ばかりで嫌になりますね。明後日はお天気になれ!
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