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ポインセチア 

2014, 11. 26 (Wed) 22:32

 最初は『戦場の円舞曲』の感想をUPしようと思ってたんですが、いきなりのSSになりました(^^ゞ
 ゲームの感想は改めてUPしたいと思ってます。でも、買って良かった。もう共通√から泣きましたから!
 で、ティファレト目当てだったんですが、プレイしたらニケに転びました。ニケは好みじゃないと思ったんだけど……。
 
 このゲームはどんだけ人を泣かせるんだと思いながら、夜中にプレイ。特にニケ√は断トツ。クロニクルモードで何度も見られるのがいいよねぇ。
 で、初SSです。ネタバレしてますのでご注意を。
ポインセチア

 それは寒い、寒い日にニルヴァーナへ届いた一通の手紙と小さな包み。
『ユリアナ、それから、みんな元気ですか』
 綺麗で優しい見慣れた文字が綴られている。ユリアナの瞳からぽろりと涙がこぼれ落ちた。
「もう元気に決まってるじゃない! ランったら!」
 万年衛生班だったニケと魔剣を失ったランが二人でニルヴァーナを去って初めての手紙。きっと二人で選んだのだろう。淡い鴾色した封筒と便箋には可愛い蝶の模様が描かれている。これがきっと二人の心の色なんだとユリアナは思った。
「んー、なになに」
 胸がつまってしまったユリアナの手元をパシュが覗き込んで続きを読む。
『ニケも私も元気です。いままで連絡ができなくてごめんなさい。でもとっても嬉しいことが起きたので報告したくて、この手紙を書きました。私たち、お店を開くことができたの。そう、パン屋さん。今まではニケと二人で他のお店で働きながら、露店でお休みの日に売っていたんだけど、私たちのパンをお店に出したいと言ってくれる人がいて、そのお店にパンを置いて売ってもいいって言われたの。まだ、まだ、自分たちだけのお店を開くことは無理だけど、こうして毎日パンを焼けることができるようになりました。
 ニケはねぇ、まだ不相応だって断ろうとしたんだよ。でも、そこはしっかり者の私が止めました、偉いでしょう』
「うわぁ、ニケの奴。もうランの尻に敷かれてるんだ」
 そんなパシュの後頭部をビタン! とランティスが叩く。
「いてぇな、ラスティン! 何するんだよ!」
 叩かれた後頭部を押さえてパシュが叫ぶ。それをさらりとうけ流してラスティンはこう続けた。
「おい、パシュ。おっまえ、そんなこと言ってるから彼女の一人もできないんだぞ。えー、それから……」
『うちのパンとジャムはこの街でも大評判なの。いつか焼きたてをみんなにも食べてもらえたら嬉しい。それは今度の楽しみにするね。だから、この街で昔から作っている冬のお祭りのお祝いのパンを二人で心をこめて焼きました。シュトレーヘンというの。たくさんのナッツやドライフルーツをどっさりいれました。気に入ってもらえたら嬉しいな。これは冬至のお祭りまでに少しずつ切って食べるの。お祭りの日が近付けば、近づくとおいしくなるんだって、私たちも初めて食べるから楽しみなの。ミルヴェリアとこの街は遠いけど、同じパンをみんなと食べていれば、きっと気持ちが繋がっていると思えるから。だから、みんなで少しづつ食べてね。ニケと二人でこのお菓子みたいなパンを作りながら、みんなが無事でいますようにとか、元気でいてほしいとか、沢山お願いを込めちゃった。でもニケは私たちが元気で幸せならみんなもきっと同じだよと言ってくれます』
「ものすごく幸せそうというか、なんというか……」
 ラスティンの微妙にランの真似をした口調の手紙の読み方に照れたようにアサカが微かに苦笑いする。
「あー、駄目。俺って心狭いから、なんだかニケの奴にムカついてきた。続きはまかせた。アサカ」
 そうして、手紙が今度はアサカへと廻る。
「もう、しかたないですね。どれ、どれ……」
『そう、そう、いま私たちが住んでいるのはとっても冬が長くて、雪も多い街だけど、雪が深い日には二人でジャムを煮込んだり、新しく焼くパンの種類を考えています。ねぇ、ユリアナは知っていた。雪の降る音はとっても優しいんだよ。まるでニケの声のようだねとニケに言ったら、それは私の方だよって言って笑うのよ。そんなことないのにね。でも、私はニケが以前よりも笑ってくれるのが嬉しいの。ニケにはいつも笑っていてほしいなって思っているの』
「うわぁ、読んでる僕の方が恥ずかしくなってきましたよ。ニケはこんなこと彼女が書いてきてるって知ってるのかな。じゃあ、そういうことで続きはアベル、君が読んでください」
 アサカが顔を真っ赤にして、手紙を今度はアベルへ渡す。
「なんで、俺が」
「え、順番でしょう。いやだな、アベル、一人だけ逃げるなら、二人が送ってきたシュトレーヘンを食べられないと思ってくださいね」
 その言葉にアベルが一瞬だけ、苦虫をかみつぶしたよな顔をしたが、意外に冷静につらつらと続きを読み始めた。
『二人で笑っていれば、どんなことも頑張れると思うの。そう、そう、サマルナのお祭りも素敵だったけど、こちらの街では沢山のモミの木に飾り付けをするんだよ。この国の神様が産まれたお祝いなんだって。とっても綺麗で、うちでも小さなモミの木に二人で作った飾りをつけました。これから、そのお祭りに出すためのケーキやクッキーも焼こうかと相談しています。
 ニケも私も幸せで、楽しくて、でも、みんなのことも忘れることなんてできなくて、いつかまたミルヴェリアに帰ることがあるのなら、一番にみんなに会いたい。
 どうか、元気で怪我なんてしないで、それから……。やだ、胸がいっぱいになっちゃった。
 それからこの街の神様に願いが届くならば、どうかみんなに幸いだけが届きますように。
 ラン』
 あまりにもランらしい言葉に、アベルが手紙を読み終えると、一瞬しんと静けさがその場を支配した。
「も、う……」
 ユリアナが添えられた小さな愛らしい包みをとくと、中からふわりと優しい匂いがした。
「うまそうだな」
 ぽつんとアベルが呟く。
「うん、食べよう、食べよう!」
 はしゃぐようにユリアナが声を上げる。
「そうですよ。お祭りのパンなら縁起物ですしね」
「へぇ、いい匂いだな」
「あいつ、腕を上げたな」
 口にする言葉はそれぞれだ。けれど……。
 ユリアナが涙を堪えて、アサカと一緒にお茶の支度を始める。
 嘗てはここにニケもランもいた。でも、今は遠い街にいる。そして剣を持っていた手でパンを焼いている。食べてくれる人の幸せを祈って……。
 それが嬉しい、きっとみんな考えていることは同じとユリアナは思った。

 しんしんと淡い音を立てながら雪が降る。こんなに深い雪を見るのはランもニケも初めてのことだ。しゅんしゅんと音を立てるケトル。パンを焼くための小さなストーブはこうして暖も取ることができる。
「ただいま、ラン」
カタリと出入り口から音がすると愛しい人の声が聞こえる。
「おかえりなさい、ニケ!」
 出迎えるランの瞳に鮮やかな赤い色が映る。
「それは……」
「ポインセチアって云うんだって。君にどうかなと思って、ほら窓辺に置けば雪の白に映えて綺麗でしょう」
 そう言えば、この花を飾っている家が多い。
「お祭りのお花なのかしら」
「そうらしいよ。それから、これ」
 手袋をしたニケの手から渡されたのは一通の手紙。
「無事についたみたいだね、シュトレーヘン」
「うん」
 渡された手紙を胸へ大事に抱え込むとランは頷いた。
「さぁ、お茶を入れて、みんなからの手紙を読もうよ」
 小さく華奢な肩を抱き寄せるとニケは暖かな二人の部屋へ入って行く。
 ランの胸には友人たちの暖かな手紙。
 ニケの胸には赤いポインセチア。
 ポインセチアの花言葉は祝福。


冒頭でも書きましたが、本当は戦ワルの感想をUPしようかなとも思っていたんですが、プレイしたら目当てのティファレトじゃなくてニケが一番になってました。で、クリスマスも近い、ぽんとこんな話が浮かびました。

シュトレーヘンはドイツでクリスマス前に毎日少しづつスライスして食べる菓子パンというのが私の認識です。(アドベントなんですよね、これ)近くのパン屋さんで作っているので、毎年買います。でも、クリスマスまでもった事はないです。おいしいですよ。

ちなみにこの戦ワルの世界にクリスマスがあるとも思えないので、冬のお祭りと書きました。もともとクリスマスは冬至だし、冬至のお祭りはどこの国でもありますからね
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