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九天玄女 

2015, 01. 20 (Tue) 21:52

 チマチマと書いていた、正史では同い年だった師匠と献帝、花ちゃんのお話です。(SSLの前にUPするつもりだったんですが、センター試験に合わせてあっちを先にUPしました)

 孔X花←献帝になりますし、ゲームと違って献帝と師匠が同い年なので嫌な方はここでブラウザを閉じてくださいね。

 こんな妄想にお付き合い頂ける方はどうぞ。
九天玄女 

 遠い昔、誰かがこんな話をしてくれた。
 いつか天よりこの地へ九天玄女が使わされる。そうしてこの争いばかりのこの国から戦を失くしてくれる。
 九天玄女とは戦と戦術をつかさどる女神。
 劉協(献帝)にとって彼女こそが戦術と兵法をつかさどる九天玄女だった。突然、彼の眼前に現れて、戦のない国を求め、争いの絶えなかったこの国に安寧をもたらしてくれた。
 それは彼女にはきっと小さなこと。でも、彼にとっては大きなこと。

 ぱたぱた、ぺたぺた、並んで歩む足音がする。
 ああ、きっと彼女だ。そう思うと献帝の胸がトクンと鳴る。これがどんな意味を持つのか、彼は知らない。ずっと、何もしないで、何も知らないで、ここにいることだけが役目だったから、彼はまだ産まれたばかりの子供と同じだ。
 だが、孔明も玄徳も今はそれでいいのだという。それは彼女も同じ。蕾がほころぶように微笑んで、無理をしないで出来ることから始めましょうと、へりくだることもなく、ごく普通に、他の皆へするのと同じように優しく声をかけてくれた。
 孔明や玄徳の話では彼女は身分というものがよくわからないのだという。彼女、伏龍の弟子である山田花が暮らしていた所ではみなが平等で、身分など存在しないのだという。
 だから言葉づかいも、立ち居振る舞いも、上手くはいかないようだ。それを笑うものをいることも知っているが、魏の曹孟徳、呉の孫仲謀、蜀の劉玄徳が寵を寄せており、そして何よりも伏龍の弟子である彼女を表立ってないがしろに扱える者などいない。
 なにより新野で孟徳軍を僅かな兵で破り、赤壁でも、彼女の策で、あの孟徳が敗北を期しているのだ。
 しかも、その後、孟徳軍の精鋭である青洲兵を心酔させて、彼を許都から逃して長安へと連れだして、この平穏をもたらしたのは、あの口さがないものたちが、いくら献策が出来ても宮廷での礼儀作法も知らない妙なかっこうをした小娘、と陰で嗤っている少女だ。
 だが、献帝にとって、だれが何と言おうと彼女は九天玄女だ。彼女が天から使わされなければ、今も彼はお飾りの人形で孟徳の言うままに、許す、という言葉しか口に出来なかったに違いない。
「孔明と花がもう来ておるのか。都へ到着するのは明日と聞いておったが」
 予定では明日と聞いていたが、予定よりも早くこの長安に到着したのだろうかと、傍に仕える文官に尋ねると、御意、と控えめな返事が戻る。
「思っていたよりも早く二人は成都よりこの長安へ到着したようでございます。ですが、あくまで陛下との拝謁は明日になっておりますので、本日、両名が陛下の玉顔を拝することはまかりなりませぬ」
 おそらく早く会いたいという彼の願いを読んだのだろう。それはならないというように、諌めるように文官が言う。
「そうであったの」
 一つ頷くと、本日の予定として決められたままの行動を取る。
 皇帝とは孤独なものだと、こんな時に思う。今までの暮らしとは比べようもないが、こちらから好意を持った相手へ会いに行くことも叶わない。そんな時は師として彼女と行動を共にすることができる孔明がうらやましいと思わずにはいられない。たしか、孔明と己は同じ年であったはず……。天の采配が己の元へ九天玄女を使わしたのなら、どうして孔明がいつも花の傍らにあり、自分は遠くから彼女の訪れを待たねばならぬのだろう。そう思った時に一つの考えが頭に浮かんで苦く嗤った。
「孔明が伏龍であり、花が九天玄女であれば、二人が共にあるのは当然か」
 小さく呟く献帝の脳裏には、桃色の衣を纏って師の後を追いかける花の姿が浮かんだのだった。
 ならば、娘々(女神のこと)を手に入れようとしたら、おそらく龍と共に天へ帰ってしまうのだろう。ならば、その姿を見つめるだけで手に入れようなどを考えてはならない。そう献帝は自らを戒める。

「思っていたよりも早く着いちゃいましたね、師匠」
「早く着いても仕事は減らないよ、花」
 そっけなく孔明から返事が返る。
「でも、陛下に早く会えると思ったのに……」
「それはもうあきらめな。決まった時にしか陛下に拝謁できないことぐらいはわかってるでしょ」
 いつものように後ろ手で花の先を歩きながら、孔明が諦めの悪い弟子を嗜める。花にとっては知り合いに会いに来たという感覚しかないだろうが、相手はこの漢帝国の皇帝なのだ。そう簡単に予定が変わりましたからというわけにはいかない。それにいささか色恋に鈍い孔明の弟子は、献帝が彼女へ寄せている気持ちを知らない。
「元気にしてるか、気になるんです。長安に落ち着いたばかりで、きっと陛下は不安なことばかりだと思うんです。私もそうでしたから、それに、あの、こう、めいさんとのことを報告できるのが嬉しいんです。きっと喜んで下さると思うんですけど」
 やや膨らんだ頬はまるで小動物のように愛らしい。そのうえ桃色に染まった頬で拗ねるような上目づかいで孔明を見つめる。頼むから、こんな人目の多いところでこんな顔をしないでほしいと願う孔明である。
「どーして僕の弟子はこう物わかりが悪くて、鈍いかな」
 その柔らかな頬を餅のように引っ張ると、孔明がいささか意地悪く言葉を返す。自分が好意を持っている、しかも恋人で婚約者と呼べる存在になった男の前で、他の男に会いたいと言いだすことなど、それがたとえ相手が皇帝だとしても許しがたい。
「いたひ、いひゃいれす。ひしょう!」
「痛かったら、こうした決まりごとをさっさと覚えること。それに君と陛下は違うよ。陛下は元からこの国の帝で在られる。心細いとか、不安だとかは簡単に言うことはできないんだ。だから、君がそう思っていても陛下の方は勝手なことはできないんだってこと、わかりな。それに僕達のことは仕事のついでの報告だってこと、わかってるでしょ」
「は、い」
 花が孔明に引っ張られた頬を撫でる。その白い指先を見つめながら孔明は息を付いた。
―うーん。無自覚は時に罪だよね。陛下が花の後宮入りを考える前に、僕達の婚約の報告ができて良かったよ。
 さすがに帝が御自ら花を後宮入りさせたいと思えば、誰も止めることなどできない。それはあれだけの権力を持っている孟徳も同じ。
 考えてみれば、帝も孔明も戦の為に沢山の物を失って、ここにいる。
 欠けてしまったものを埋めてくれた者に心惹かれるのは当然のこと。孔明は幼い亮と呼ばれている時からの片恋だ。しかも一度はあきらめた思い。もう手放すことなんてできない。だから……。同じ目で花を見つめる献帝に気がついても、花のことではもう臣下の礼などとることはできない。
「でも、陛下と師匠が同い年って何だか変ですね」
 孔明の内心の葛藤などわからぬようで、花が面白そうに、そう言葉を零す。
「変って、それ失礼じゃない。陛下にも僕にも」
 もう一回、ほっぺたを引っ張らなくては駄目かと、じりっと花へ近づくと危険を感じたのか、孔明の手が届かない場所へと慌てて距離を取る。
「こんなことばっかり上手くなって、この子は……」
「だって、痛いんですよ、もう」
「だったら、お仕置きされないようにしな」
「そんなつもりじゃなかったんですもん。私は師匠が亮君だった頃から知っているけど、あの日、同じ場所に陛下もいたって言うのが何だか夢みたいで」
 同じ時に同じ場所にいた二人の男の子。一方は奸臣に利用されるしかなく、一方は自分と出会ったことで運命が変わった。二人が入れ替わっていてもおかしくはなかったのだ。そう思うと、縁の不思議を感じずにはいられない。
「ねぇ、花。もし、もしもだよ。先に出会ったのが陛下だったら君は……」
 孔明は不敬であることはわかっていても、そう聞かずにいられなかった。
 花は一瞬、大きく瞳を見開くと、なぁんだというようにいうようにふふっと微笑んだ。
「それでも私は必ず亮君に出会うんです。そうして、また隆中の泰山で師匠に進む道を教えてもらうんです。陛下と先に出会っても、きっと、私はまたあなたと出会って恋をするんです」
 真っ直ぐな瞳が孔明を見つめていた。
「さすがは孟徳殿を何度も追い詰めた軍師だね。完敗だよ」
 半ばあきれたような口調で孔明が言う。だが、平静を装っているその後ろ姿から見える耳が真っ赤だ。
「孔明さん!」
 一旦、自分から離れておいて調子がいいとは思いながら、花が孔明と手を繋ぐ。
「は、花!?」
「この手が離れていても、心はいつでも繋がっていますからね」
「はい、はい」
「もう! 返事は一回です」
 そのまま、二人は手を繋いだまま、与えられた執務室へと向かって行った。

 せめて天女の姿だけでもと思い、隠れて聞いてしまった言葉。
 やはり九天玄女と伏龍は共にあるのが天命なのであろう。
 胸の痛みは初めて感じるもので、切ないけれど、あの蕾がほころんで花開く笑みが見られなくなるのはもっと嫌だ。
 だから、明日、二人から婚儀をあげるという言葉を聞いたら祝いの言葉を述べよう。
 そう献帝は思う。
―伏龍と九天玄女が婚儀をあげるとは、真にこれに勝る瑞徴はあるまい。
 天女はこうして龍と結ばれるのだ。だが、今だけはこの胸の痛みを辛いと感じても良いであろうか。帝などではなく、劉協という一人の人として……。


正史では孔明さんと献帝は同い年だったようですね。ゲームでは献帝√はないですし、なにより花ちゃんより年下の弟ポジションですので、こんなことはあり得ないんですが、妄想していたら、書きたくなりまして……。実際は献帝にとって花ちゃんが必要と周囲が思えば後宮入りってありと思います。思い出がえしネタになりますけど。その辺りの師匠と花ちゃん、献帝の葛藤ッておいしいとは思うんですけど、今はこれが精いっぱい(^^ゞ
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