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我が麗しの貴婦人1 インピーの場合:musical box 

2015, 01. 29 (Thu) 22:50

 バレンタインっていろいろ書きたくなりますよね。(SSLは現在2話目を書いてます)
 
 今回は『コドリア』初書きです♪
 で、インピーさんですね。ルパン√は終わっているけど、まだカルディアちゃんがみんなのマドンナ状態と思っていただければと^^;
  
我が麗しの貴婦人1
インピーの場合:musical box

 ロンドンの街はどんな季節でも、あまり天気が良いとは言えない。産業革命が始まり、まるで目の前がくらくらするようにめまぐるしく動いて行く。まるで自動人形のようにうごめく人々。でも、その顔は晴れやかで、希望に満ちている。
 大英帝国はますます発展するだろう。あの男勝りな女王はそれを成し遂げて、歴史にその名前を残すだろう。そう、イングランドと婚姻したという偉大な女王エリザベスのように……。
 カルディアの父親が興したあの大事件を、彼女の指揮のもとで最小の被害で終わらせることができたことも、彼女の今後の治世に大きな意味を持つだろう。
 科学は人を惑わすこともあるけれど、科学は人を幸福にもする。いや、最大多数で科学で得る幸福の方が勝つ。
 それがインピーの考えだ。
「インピーさんはポジティブシンキングってね」
 英国の冬の寒さは格別だ。だが、もうじき聖バレンティヌスの日だ。カルディアにはまだ意味なんて良くわからないだろうけれど、何かしたいと願う。笑顔を見たいと思う。
 そういえば、サンが彼女に『恋とはどういうものかしら』とかいうオペラの曲を聞かせていたみたいだが、反応はいまいちだったようだ。
 まだ、カルディアは広い世界に産まれおちたばかりだ。その中で初めて本当の自分を見つけた。だから、今はまだ恋なんてわからなくてもいい。
 でも、相棒のルパンではないが、紳士たるもの、愛する少女へ贈り物の一つもできなくては男がすたる。
「おっちゃん! 頼んでいた部品、入ってきたぁ?」
 広い通りに面したそれなりに大きな時計店へいきなり入ると、いつもと変わらない言葉遣いで声をかける。それこそ、コックニーで使われているような言葉だ。
「インピー様。以前申し上げたと思うのですが、その身なりと話し方はなんとかならないのでしょうか。全く、陛下のお言葉添えがなければ……」
 言いたい言葉はそこでのみ込んだ。何せ、ここは王室御用達の店なのだ。本来ならば、インピーのようにタイもしていない人物が気軽に入ることなんてできない。だが、あの一件からこの店への出入りは自由だ。夢は月へ行くことのインピーだが、やはり細かなことはできないこともある。そんな時に今まではルパンやサンに頼んでなんとかして貰っていたのだが、いかんせん、かゆい所に手が届く様なわけにはいかないのが現状だった。
 それが今ではおおっぴらに自分が出向いて、細かな部品を頼むことができる。さすがは大英帝国のクイーン! 態度もでかいが、肝っ玉もでかいと思ったことは暑苦しいレオンハルトのおっさんには聞かせられない本音だが……。
「細かいことを気にしちゃ、駄目だって! じゃないと偉大な発明はできないでしょ。で、頼んでいたシリンダーの細工の最終的な調整はどう? さすがにあれは俺様でも無理でさぁ」
 店主の苦い顔なんてお構いなしで、店の中へずかずかと入りながら、インピーは満面の笑みでまくし立てる。
 頼んでいたのはmusical boxの円筒形シリンダーの細工の調整だ。さすがにこれは細かい作業になるし、じぶんでやれるところまではやったのだが、綺麗な曲にするためにはどうしても最後の仕上げは職人の手が必要でこうして頼んであったのだ。
「できておりますよ。陛下のお口添えをございましたので、腕のよいスイスの時計職人に仕上げてもらっております。お待ちください、ただ今お持ちいたしますので」
 そのまま英国紳士たらんと苦渋の努力をしながら、店主は店の奥へと姿を消した。言うまでもなく、インピーの姿が見えた段階で店は閉店扱いになっている。女王の命だと言っても、この店を贔屓にしている客は上級階級のものだ。インピーがいけないと言うことはないのだが、コックニー訛りが入った話し方や店にあわない服装はやはり困るのだ。おそらくそんなことを女王に訴えたら、大笑いして、そんなくだらないことを気にする客などそちらから出入り禁止にしておやりなさい、とでもおっしゃるのだろうが……。
 もっとも繊細な櫛歯が折れないように、厳重に包装されたシリンダーを取り出す。これがmusical boxの命だ。これが一つでも欠けてしまったら美しい曲を奏でることはない。
「インピー様。こちらができあがったものでございます」
 恭しく、慎重に包装を解くと中から金色に輝く円筒型の筒が現れる。そこには曲を奏でるために必要な櫛歯が美しいと形容しようがない輝きを放っている。
「わぁお! これはまさに職人技だねぇ。さすがのインピーさんも驚いちゃったよ」
「いえ、職人の方も驚いたようでございますよ。こちら円盤型に比べると細工が難しゅうございますのに、失礼ながら職人ではない方がここまで仕上げるとは見事だと受け取りに行った者から聞いております」
「インピーさんは天才だからね、と言いたいけど、これはちょっと違うかな。愛の力って奴? ほら、大事に人が泣きそうな時に傍にいられない時にはこれを聞いて、眠ってくれたら嬉しいかなって考えたんだ。これがインピーさんの子守歌ってね♪」
 そうして、インピーはまるで愛おしい者へ触れるような手つきでシリンダーへ触れた。
「あの子はずっとひとりぼっちだったからさ。今は俺たちが傍にいるから、昔みたいに寂しくはないと思うけど、どうしても一人でいたいと思う時だってあるでしょ。だからね、そんな時にインピーさんの代わりに傍に置いてもらうのさ。それでこいつが歌を歌うんだよ。さびしくないよってね」
 そういって笑って見せる。女王からは天才的な技術者だけど、その分やかましいと聞いているのだが……。だが、店主は英国紳士にふさわしくこれ以上の詮索はしないことにした。誰だって、秘密の一つや二つは持っているもの。そこへ踏み込んでいいのは、それを許された人間だけだ。だから、彼はこう言葉を続けた。
「こちらのシリンダーを収める箱はどうなさるか、お決まりですか? よろしければ、私の方でご準備いたしますが」
「うーん。取りあえず、自分で頑張って作ろうかと思ってんだよね。あの子に似合う花を蓋に刻んで、中には鏡を貼りつけてとか考えちゃってんだけどねぇ」
 満面の笑みが広がる。このmusical boxをもらうレディは幸福だろう。
「さようでございますか。お役にたつがございましたら、またお声をかけてくださいませ」
 深く頭を下げる店主へインピーは
「あんがとね。さて、インピーさんの愛の力はここからだからね、カルディアちゃん」
 その様子に表情を崩すべきではない店主は思わず笑いが漏れてしまった。
「これは御無礼を……。どうぞ、レイディ・カルディアとインピー様に幸があらんことを」
「大丈夫、このシリンダーの曲はバッハの『主よ、人の望の喜びよ』だから」
「さようでございますか、では、神はお二人の上にありますね。この度はご注文をありがとうございました」
 そのまま深く店主はインピーへ向って頭を垂れた。
 ホサンナ、幸いなれ。全ての命あるものよ。憎しみの向こうにあるものを見いだしたまえ。
 そこには救いと愛が溢れた世界がある。


 一応、『コドリア』バレンタインシリーズと思ってもらえればいいなと……。一人ずつ、カルディアちゃんのプレゼントを考えて、最後に全員で渡すというのを目指してます。うーん、SSLパロもあるので、時期がずれたらごめんなさいということで。(恋戦記は書きますよ、絶対に。書きたいのぉ!)
 タイトルのmusical boxはオルゴールの事です。この時代はまだ円盤型が主流だったので作るのは大変だった思います。でも、天才(どーして天災が先に変換するんだろうか?)インピーさんなら、細かい所はともかく自分で作るだろうなと思ってこんな話になりました。
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