FC2ブログ

育児休暇日和 ~丞相 曹孟徳の場合1~ 

2014, 07. 29 (Tue) 21:23

 ある方のゲーム攻略サイトを閲覧させていただいて、ものすごく面白そうと思って始めた『三国恋戦記~オトメの兵法~』
 
 見事に嵌りました。孟徳さん大好きです(^^)

 花ちゃんからいろいろ国の違いを聞いていた彼。もし花ちゃんと婚儀を終えて、赤ちゃんができたら、育児休暇を取りたいだろうなと……。短編で納めるつもりだったのですが、続いてしまいました。各キャラVerで書けたらいいなと思ってます。
育児休暇日和
~丞相 曹孟徳の場合1~

 孟徳の日々は忙しい。丞相という立場を考えれば当然だ。当然なのだけれど……。
「あの、そろそろ出かけないと、元譲さんか文若さんが怒ってやってくると思うんですけど」
 一向に出仕しようという様子が見えない夫である孟徳の姿に困ったように花が声をかける。花の懐妊がわかってからは、こんなやり取りが毎日続いている。
「えー。だって、こんな状態の花ちゃんをほったらかしにして、仕事になんていけないよ。心配で、心配で、君が走って転ばないかとか、きちんと食事をしているかとか、もしかして危ない目に会ったりしてないかとか……」
 そのまま長々と元譲か、文若が彼を迎えに来るまで毎日繰り返される言葉。さすがの花もそらで言えるくらいだ。
「こっちの世界でも育児休暇があれば良かったんですけどね」
 思わず、生まれ育った国にある制度の名前がぽろりと口からこぼれ落ちた。
「花ちゃん、その、いくじきゅうか、って何?」
 しまったと思った時は遅かった。期待で瞳をきらきらとさせて、微笑む孟徳の笑顔の向こう側に眉間に皺を寄せる文若と困り顔をした元譲の姿を花ははっきりと見ていた。



「で、そのいくじきゅうかというのは一体どのようなものなんですか?」
 花をじとりと見つめる文若の目が恐い。花から育児休暇のなんたるかを聞きだした丞相は、嬉々として元譲と文若に花の出産が無事に終わるまでの自らの育児休暇を宣言したのだ。勿論、丞相たる彼には山のように仕事があることがわかっていながらだ。そこで慌てて、花の部屋へやってきた二人の前で花は育児休暇の説明をする羽目になり、今に至る。勿論、上司である孟徳はこの場からは引き離されている。彼がいては話をまぜっかえされるからである。
「えーと、私の住んでいた国の制度で、あの赤ちゃんができると親になる人は取ることができるんです」
 現代ではまだまだ現役の高校生の花にはそんなに深い知識などはないが、これくらいはニュースなどで知っていたし、元より孟徳にそうだったらいいですね、程度の気持ちで話した、つもりだったのだけれども……。甘かった、花は自分の甘さに情けない気持ちになっていた。
「文若さんにも以前、お話したように私の住んでいた国では女の人も仕事をしていますし、婚姻をしても仕事を辞める人は少ないんです。でも、妊娠した時はやっぱり体の子とや赤ちゃんのことがあるから、特別にお休みが貰えるんです」
 拙いながらも聞きかじりではあるけれど、花は覚えていることを一生懸命に説明する。
「ならば、男性が取る必要はあるまいに」
 額に手を当ると文若は天を仰いだ。子を孕むのは女だ。ならば、女が身体を労わって仕事を休むことは理解できる。だが、なんで男までという顔つきだ。
「でも、子育てって夫婦の問題じゃないですか、だから男性も取らなきゃいけないんです。それが当たり前というか、私の国では決まりでそうなっているというか……」
 最後の方の声が段々と小さくなって行くのは、自分のうかつさで大騒ぎになってしまったことを申し訳ないと思っているからだ。
 ここは花のいた世界とは違う。女が孟徳や文若や元譲のような仕事をすることもないし、第一労働法なんて存在してない。
「だが、子供を産むのは女しかできないだろう。男はその休みの間に何をするんだ?」
 花と文若のやり取りを黙って聞いていた元譲が口を開いた。
「そうですね。家事とか、あとは子供が産まれたら子供の世話とか~」
 言いながら考え込む花に、文若はため息をついた。
「では、子供が生まれた後も休みが続くということか?」
「それは、決まりがあって、お仕事によって違うというか……」
 この世界では会社のことをなんていうんだろうと考えながら花は答えを返す。でも、孟徳の立場ならば公務員だろう。
「では、その決まりというのは誰が定めるのだ?」
「大きな決まりは国です。でも、細かなことはその職場で決めて行くんです。国が決めたことに反しないように」
「では、その決まりがなければ意味がないということだな」
「そう、なります、よね」
 花は、あはは、と乾いた笑い声を立てた。丞相としての孟徳が無理難題を通そうとするとは思いたいけど……。何しろ、花に対しては超がつくほどの過保護なのだ。心配してくれのはとても嬉しいのだけれど、度がすぎて文若や元譲の負担が大きくなるのは忍びない。花にとって、敵も多いこの場所で自分を認めてくれている大切な人たちなのだから。
「だが、文若。孟徳ならば、そのいくじきゅうか、とかいうものを決めてしまうかもしれんぞ」
「充分に考えられますね。確かに子供は国の宝と言うべきものです。夫たるものが懐妊した妻を守る制度があれば、妻の負担は減るでしょう。特に下々のものは、ですが、その間の給金はどうなるのですか?」
 何だか風向きが変な方向へ向かっているようであった。
「それもそれぞれです。普段を変わらないお給金を払うところもあるみたいだし、いつもの七割とか、半分とかになることもあるみたいです。私も良くわからないんですけど」
「あなたは自分が良くわからないことを丞相へ進言したのですか。あなたの失言癖にも困ったものです」
「お、おい」
「元譲殿は黙っていてください。このまま丞相が仕事を放り出されては国が動きません。あなたももう夫人の一人なのだというご自覚をお持ちください。こんなことで国を傾けては、それこそ傾国の夫人という不名誉な名がついてしまいます」
「ご、ごめんなさい」
 花にしてみれば、こちらの常識にも慣れてきたつもりなのだが、時々元の世界の常識をさらりと口にしてしまうことがある。勿論、結果オーライで良いこともあるのだが、隔たりがありすぎるのだ。
「私から孟徳さんにきちんとお仕事をしてもらうようにお話しますから」
 心底、申し訳なさそうな花の様子にそれ以上の苦言をさすがの文若も言うことができなかった。今の花は文若にとっては身分も違うのだから……。
「では、よろしくお願いいたします」
「まぁ、頑張れ」
 あまり期待できないような言葉を残して、二人は花の部屋を去って行った。
 どこでなにをしているのやら、孟徳はいまだに戻らず、花はどうやって説得したものかと、これからの展開を考えて深いため息をついたのだった。
続く
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント