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ハッピーエンドのその先 

2015, 05. 06 (Wed) 22:39

 GWに「シンデレラ」を見たかったなーと思うありあんでございます。

 それがこんな話になりました。
ハッピーエンドのその先

「ふーん。君の国のお話はおうじさまという輩と婚姻を結んで終わることが多いんだね」
 玄徳が預かっている戦で両親を亡くした子供たちに、花が子供の時に聞き馴染んだお伽噺をしていたら、いつの間にやら後ろに師匠こと孔明が立っていた。
「そんなお話ばかりでもないんですけどね」
 おうじさまというキーワードがどうやら孔明の琴線に触れたらしい。
「でも、君の国の女性にとっても良縁が幸せになるんだね」
 おやつ代わりの干し芋を子供たちへ花が渡すのを手伝いながら、孔明がぽつり呟く。
「これはお伽話ですから」
 少しばかり拗ねているような孔明の顔に、花は苦笑いを微かに浮かべた。
「だって相手は一国の君主になるんだよ」
「でも、お姫様が欲しいのは国じゃないですよ?」
 花が小首を傾げた。
「お金だって沢山もっているわけだし」
「私は貧乏でも一緒に頑張って働いている方がいいですけど」
 なんで、こんなことに反応しているのかなと、いささか天然の花にはわからない。だから正直に自分の思うままを言葉にして返す。
「綺麗な衣を着て、おいしい物を食べて、楽もできるよね」
「いくら綺麗な着物があっても、おいしいものが食べられても、そこに心がなかったら意味がないと思うんです。おいしいものが少ししかなくても、大好きな人と分け合って食べればお腹がいっぱいにならなくても心はいっぱいになるでしょう。それに綺麗な衣を着ることができても、気持ちのこもっていない褒め言葉を貰うだけなら嬉しくないと思うんです。だったら、小さな花を一輪、髪に飾ってもらう方が私は嬉しいです」
 花が小首を傾げながら孔明の問い掛けに応えていく。
「ほら、身の丈に会った生活が幸せだっておもいませんか?」
「うーん。でも、孟徳殿にすり寄るような女性だっているわけじゃない~」
 その言葉に孟徳や文若、元譲と出会った時のことを思い出す。何しろ、あの時は文若に主である玄徳の妾か!? と問われたのだから……。
「それは、まぁ、そうかもしれませんね。でも、私は違いますよ」
 順番に並んでおやつの干し芋を行儀よく待つ子供たちへ、孔明と同じように渡しながら、花が断言する。
「師匠、お伽噺はめでたし、めでたしでおしまいですけど、大事なのはその先だと思いませんか?」
 またお話してね、と干し芋を貰って手を振って去っていく子供たちへ同じように手を振り返しながら花が笑う。
「めでたし、めでたしの先?」
「はい」
 楽しそうに走り去って行く子供たちを見送りながら、花はそのままスカートを膝の内側にたくしこんでその場に座りこむ。その隣に同じようにいささか行儀悪く孔明も座り込む。
「お伽噺はそこでおしまいですけど、私たちはハッピーエンドのその先を生きていかなきゃいけないじゃないですか」
「はっぴー、えん、ど?」
「あ、めでたし、めでたしのことです」
「うん、そうだね」
 孔明が神妙に頷いた。
「お伽噺の結末は決まった道ですけど、そこからは自分で道を切り開いていかなきゃならないと思うんです」
 花がまっすぐな目で孔明を見つめながら言葉を続けた。
「わたしはわたしの王子様がそんな風に道を切り開いていく人だってわかってるから、贅沢も綺麗な衣も、お金もいらないんです」
 にこにこと嬉しそうに語りかける花に、
「君ねぇ、そーいうことを嬉しそうに言わないでくれないかな。しかもこんな場所で」
 半ば撃沈したような感じで膝の間に頭を押し付けて孔明がくごもった声でちまちまと呟く。その耳が赤い。
―とてつもない破壊力でしょうが、この子は……!!
 しかも無自覚だからたちが悪い。
「師匠。私、変なこと言いましたか?」
「……、……め…さん……」
「え……」
 孔明の声があまりに小さくで聞こえない。その言葉を聞き直す花の頭を抱え込むように胸に巻きこむと、
「こーいう時は名前で呼んでほしいんだけどって、言ったんだよ」
「し、こ、孔明さん! わかりました、は、はなしてぇ」
「これはお仕置きです。黙ってしばらく、こうされてなさい」
 赤くなった顔を見られたくなかっただけなのだが、なんだか花の言葉に負けたようで少しばかり悔しいのも事実だ。
 お伽噺のその先に花が求める、めでたし、めでたしがあるのなら、まだまだ一緒に頑張らなければならないだろう。
 綺麗な衣も、贅沢も、何にも要らないというこの少女はものが溢れんばかりの所から来たのだろうに。
「君が教えてくれるものは、いつだって僕に道を示してくれる」
 ハッピーエンドの先にあるのは、思っている以上に困難な道のりなのかもしれない。お伽噺はそこでおしまいになるけれど、孔明たちはその先を見ていかなくてはならない。
「おうじさまはもうしばらく頑張らなくちゃならないみたいだね」
「お姫さまだってがんばるんです!」
 耳まで赤くしながら、それでも勇ましく花も宣言する。
「うん、頼りにしてるからね。僕のおひめさま」
 ハッピーエンドのその先に、きっと待っているのは二人で築き上げて掴む幸せな未来。
おしまい
 
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