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きんぎんすなご 

2015, 07. 07 (Tue) 21:52

 七夕ですね。でもお天気が悪くて残念です。
 そして久しぶりの孔花です。こんな風にワイワイ楽しくやっている玄徳軍も大好きなんです(^^♪
きんぎんすなご

 古くなった竹簡に誰にもわからないように、願い事を書く。
 嘗て自分の師匠だった人がやってきた国の風習。願い事が出来るほど人々は豊かに暮らしていることがうらやましい。戦乱が収まっても、人々はまだ疲弊している。何かを願うことよりも今日を生き延びることで精いっぱいだ。
 豊かな国になってほしい。
 平穏な国になってほしい。
 思うだけのことなら沢山あって、書きだしたらきっと竹簡ひとつでは足らない。
「師匠、お願いはもう書きましたか?」
 そういって孔明の手元を覗き込んでくる少女の頭を抱え込んで、
「覗き見は許しません」
 と言ってみる。すると少女は耳まで赤くして、隠さなくてもいいのに、と小さく呟いて、その手からじたばたと逃げ出した。孔明の嘗ての師匠。そして、今の弟子であり、特別な人。
 だからこそ、この願いごとは秘密だ。
 本当にありえないほど、小さなつまらない願いごと。
「はなー、短冊を吊るすわよぉ」
 そこへ庭の片隅でわいわいと笹飾りを作っていた芙蓉姫から声がかかった。
「はーい! 師匠も早く来てくださいね」 
 急ごしらえの笹飾りには器用な君主が編んだ紐で吊るされた願い事が書かれた短冊がたくさん下がっている。文字が書けない子供達には花や芙蓉姫が代わりに書いてやったみたいだ。どうも貧しいながらも蜀と云う国はこう祭りのようなことが大好きなのだから、困る。そういう自分も困っていてもこんな国が大好きなのだからもっと困る。
「おお、これは見事だな」
 忙しいはずの君主もいつの間にやら庭に出て、笹飾りを見物している。
「玄徳様! 玄徳様もお願いを書いたんですか?」
「ああ、一応な」
 芙蓉姫のかぶりつく様な勢いにやや引きながら、玄徳が手にした竹簡をぶら下げて見せた。
「えーと、なに、なに……。『皆が元気で暮らせますように』、ですかぁ~。そこは蜀が三国一豊かな大国になりなすようにとか、あると思うんですけど」
「豊かな国になるためにはまず皆が元気でいることの方が大事だと思ったんだがな」
「いえ、いえ、我が君。それは大事なことです。病に罹らず、元気に働くことができれば、国などと云うものは自然に豊かになるものです。民のことを思われた良い願いだと私は思いますよ」
 いつもの飄々とした笑みを手にした羽扇でかくして、孔明がもっそりと姿を現した。
「師匠も短冊を持ってきたんですか?」
 その姿に花がぱっと表情を明るくさせる。
「僕の分は最後に吊るすからいいんだ。それよりも我が君、そろそろ宴席を始めないと翼徳殿が……」
 それ以上は言わずもがなだ。ずるーい! と声をあげる花へ師匠権限だよとにやりと笑いかけてから、主君である玄徳に宴席の時間を告げる。
「ああ、これ以上は翼徳を待たせるわけにはいかないな。子供たちの短冊は全て吊るしてやったのか?」
 大の宴席好きで酒好きの翼徳が騒がぬうちにと皆が自然と急ぎ足になる。だが、やはり一国の主である玄徳が気にかけたのは、この城で預かっている親を失くした子供たちのことだ。子供達もそれぞれに願いごとを書いている。
「はい。文字の書けぬ者は花殿や芙蓉殿が代わりに願いを短冊へ書いて、全て私が笹へ吊るしました」
 几帳面で真面目な子龍が玄徳に供手をしながら報告する様はまるで戦場のそれだ。玄徳は、そうか、と笑った。
 そのまま、わいわいと皆で広間へ移動しながら、孔明は一人、笹飾りの傍に残った。どうやら花は芙蓉姫に連行されて、宴席用の装束に着替えさせられるようだ。
 それを黙って見送ると、孔明は着物の袂から自分の書いた短冊を出して、目立たない場所へそれを吊るした。
 願うことは沢山ある。
 でも全ての願いを叶えることなんて天帝でもきっと無理だ。物事は決して自分の思い通りにはならない。もしなるとすれば、それは奇跡だ。でも、もう孔明はその奇跡を得てしまった。
 だから、満天の星に願いをかけるのなら、この言葉だけ……。
「なにもないのが一番いい」
 そのとき、遠くから花の歌声が聞こえてきた。
「ささのは さらさら
 のきばにゆれる
 おほしさま きらきら
 きん ぎん すなご」
 終

七夕ですね。でも天気が悪い……。
三国志の時代はこの時期は書物や衣服の虫干しをしていたそうですね。で、織姫と彦星の話はこのころ成立したそうですね。
この時期になると、誰に聞いたのか覚えていないんですが、七夕の日の朝に里芋の葉っぱにある朝露を集めて、それで墨を磨って、その墨で短冊へ字が上手くなりますようにと書くと字が上手くなると聞かされていたんですよね。
だれだっけ、これを教えてくれたのは……??
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