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死神と見習い1 

2016, 08. 07 (Sun) 23:11

 伊坂幸太郎さんが好きで、作品を読んでいた時に、「死神シリーズ」の主人公の千葉がこの刀剣乱舞の世界に来たら、どんな風になるのだろうと思いついて書いた作品です。

 なので、伊坂さんの「死神シリーズ」の作品の内容には触れていませんが、死神の千葉の性格や設定などははっきりネタバレしています。どうしてもこの世界観でお話が書きたくてクロスオーバーさせていただきました。ご了承いただければと思います。

 たくさん、とうらぶの2次作品を読んでいて、自分でいろいろ謎だなぁと思っていたことも書いていますので読まれる方によっては作品世界を否定しているように感じるかもしれません。
 ですが、わたしは刀剣乱舞が好きです。ただ、こんなことを審神者が思っているかもしれない、見習いになる人が思っているかもしれないと思いながら書いてます。続いてしまいましたが、そんなに長くはならないと思います。広い目で見ていただければありがたいと思います。

 それでも気になる方や絶対に許せないという方はそっとブラウザを閉じておかえりください。読んでからの苦情は受け付けません。
 一応、参考文献にしたものもありますので巻末に記載させていただいております。
 うーん、久しぶりの作品がこうなるとは自分でも思いませんでした。続けて、SSLパロ沖千でお話をUPしていますので、よろしければ覗いてやってください。

追記:8/8に気になる部分を修正しました。すいません~。日本語になっていなかったりしていたので(^^ゞ
死神と見習い1

 Side:死神

 時代が変われば、人の生き死にも変わる。当然だ。昨今の調査の複雑さに私は辟易しているが、だが元来仕事とはこうゆうものなのだろう。
 曰く、退屈である。
 曰く、面倒である。
 曰く、思い通りにはいかない。
 曰く、根気と我慢強さが何よりも必要とされる。
 そう……。対象である人間を調査する一週間、私は仕事に全力を尽くさなくてはいけない。担当した人間を調べ、死ぬべき時期にあるかどうかを報告する。
 それが死神である私の仕事だ。
 だが、こうも長く生きているとこの世界というものがここまで目まぐるしく変わるものなのかと、感動すらしてしまう。平和ぼけといわれたこの国がいまでは戦火のもとにあるのだから。
 この戦争、いやあえて戦というか、それが起こっていることも、その戦場がどこなのかも、国民のほとんどが知らない。
 戦うのは刀剣。その刀剣に宿りし魂を呼び覚ますものを審神者といい。呼び覚まされた刀剣の付喪神である彼らを刀剣男士という。そして戦う相手は時間遡行軍といわれる、歴史改変を目的とするテロリスト集団だ、そうだ……。
 指揮を取るのは霊力という力が備わった審神者といわれる人間。だが、そのほとんどが戦争経験すらない素人。使役するもんがスペシャリストであっても肝心の頭である指揮官が戦闘経験どころか戦争も知らない軍人集団だ。そんな彼らが従えるのは偉人、英傑と呼ばれた人物が使い、彼らの気持ちがこもったがゆえに末端とはいえ神の称号を得た刀剣男士というもの。
 そして戦場は時間を遡った過去。歴史遡行軍たちはここで歴史を変えていくという。彼らのテロ行為で死すべき人間が死なず、生きるべき人間が死ぬ。歴史改変ということだ。我々死神の立場からとしてみれば迷惑千万、蛮行としか言えない行為だ。何しろ、こちらが一週間かけて調査して出した結果を、こんなわけのわからない連中に、簡単にひっくり返される可能性があるわけだから、これは立派な業務妨害というべきものだろう。だが、この件に関して私たちがどこまで口を出すことができるのかはわからない。というよりも、現場の者がどうこう言えるわけもない。すべからく仕事とはそういうものだ。
 しかも、本部曰く、今回の私の仕事はこの戦争つまり審神者制度が始まってから、私たち死神が調査対象の元へ初めて送られるという。つまるところ、リーディングケースになるらしい。らしい、という言葉が意味することを私が知る必要はない。私は上から与えられた仕事をいつも通りに行うだけだからだ。ただ場所がいつもと違う本丸と呼ばれる審神者と刀剣男士だけがいる空間で行われるというだけだ。
 やるべき仕事内容は変わらない。
 一週間、担当する人間を調べて、死すべき時であるかどうかを上に報告する。答えはたった二つ「可」か「見逃し」か。ほとんどの場合は「可」となるのだが、それでも私は対象を調べることに手抜きはしない。ほかの死神のほとんどがろくに調べもしないで「可」としていることも知っているが、私にそのやり方は向いていない。仕事とは真摯に対応すべきだろう。それは特殊な空間であろうと、今まで調査のために訪れていた場所であっても、だ。
 そう、先月の調査対象であった区役所の若い公務員が言っていたように……。
「毎日、毎日、私は決められた行動をするしかないんですよ。ほら、ハムスターがくるくると回し車を回しているみたいに、同じ時間に起きて、朝食を作り食べて、同じ時間の電車に乗って、役所に付けばタイムシートを押す。そして担当部署から廻されてくる書類の同じ個所を確認して、押印して、上席へまとめて渡す。そうして私が廻した書類は同じように上席にぐるぐる回されてもっと上の部署へと渡って、この小さな区役所でくるくる回るだけ廻り尽くしてようやく回転を止めるんです。でも不思議なことにそれでもなんとか仕事は動いていくんです。結果はきちんと出て、税金を滞納している人へは督促状が届けられ、健康保険料を未納している人にもきちんと連絡が届く。そうしてかれらはきちんと納めるべき金銭を納めることになる。これこそが正常な社会を作り上げているんです。一見、無駄で、退屈で、忍耐ばかりのつまらないと思えるような仕事であっても」
 それが仕事をしていくうえでとても真摯で大切なことであるかのように彼は語っていた。
 私は雨音を聞きながら、『たしかに仕事には無駄と思えるようなことは多い』と内心で彼に向って呟いた。
 仕事とはまさしく無駄と根気と忍耐の集合体だ。だが、無駄と根気と忍耐でこの新しい環境での仕事を私は成し遂げなくてはならない。それが責任をもって仕事をするということだ。
 そんな私にここでは音楽を聴くことはできないだろうと同僚が古臭いipodを私に渡してくれた。本音を云えばありがたい。人間が発明したもので最も尊いものは何を置いてミュージックだ。そして最低なものは渋滞だ。だが、狭い本丸という中では渋滞に遭うことはないだろう。ならば、ここで大事なのはこの閉鎖された生活空間の中でミュージックが聴ける状態を整えておくことだろう。
 イヤフォンを付けて簡単な操作をすると、そこからは既に化石とも言えるような音楽が聞こえてくる。
 家庭に問題を持った少年たちが森の奥にある死体を探しに行くという物語が映画化されたときに主題歌となった。
「スタンド・バイ・ミー」
 選曲に問題があるような気がするのは、あの物語が森の中へ少年たちが死体を探しに行く物語だからなのかもしれない。だが、まぁ、私の場合は担当する人間が、死体になるべきなのか(言うまでもなく私たちの管轄外の場合を除いてだ)、それともそうならないように見逃すべきなのかを調査するだけなのだが、この閉鎖された空間でミュージックのない生活を過ごすのは辛い。ありがたく受け取っておこう。何しろ、この本丸という場所では、いつものように調査対象から離れてミュージックショップへ出かけることができるのか、今の私にはわからないのだ。

Side:審神者

 『遠征から三部隊が無事帰還。第一部隊は太鼓鐘貞宗の捜索を兼ねた延享の記録、白銀台への出陣。途中、部隊長の燭台切光忠が重傷になったため、強制帰還。重傷者、二名。中傷者、三名。負傷無し、一名。資源の確保無し。手入れ部屋は最大拡張しているが、一名分足りないため、中傷者一名を手入れ部屋にて待機させる。現在、手入れ札を余分に使う余裕が我が本丸にはない。理由は、政府からの連絡にて、近日中に刀剣男二名が新たに確認された為の鍛刀任務要請があったためだ。手伝い札の消費節約のための対処と刀剣男士に説明。こんのすけ以下了承。
 その後、政府への業務連絡のため書類作成。書類仕事が得意な近侍の手伝いもあり、通常よりも早く終わるが、手入れが終わっていないものがいるため、刀剣男士たちだけに先に食事をさせる。
 また手入れ終了を待つ時間の間に、数日後に控えた見習い二名の受け入れのための準備、対策、部屋の用意をする』
 この本丸に担当以外の同じ立場になる人間が来ることは純粋にうれしいのだが反面、怖い。私はまだ人としての常識を持ち合わせているだろうか?
 けがをしても手入れで傷一つ残らずに治り、そのくせ人間と同じような感情を持ち、生活する神様の元でずいぶんと長いこと過ごしてきた。彼らが嫌いなわけではない。だが、ここは戦の最前線であり、私が生活してきた世界とは全く違うのだ。それを彼らは理解できない。そして人間である私の常識は彼ら刀剣男士には通用しない。この戦争、そのものがどんな状況にあり、結果と良い方向へ向かっているのか、それとも芳しくない状況にあるのか、この閉鎖された本丸では全くわからない。得られる情報も政府、もしくは演練でで交換するものだけ……。
 わかっているのは遡行軍が現れる場所がさらに広がり、新たな戦場が見つかるたびに力を貸してくれる付喪神が増えてゆくということ。もちろん戦に勝つためには新しい戦力が必要なこともわかっているが、こうも新しい戦場が拡大され、新たな刀剣男士が投入されては、既に顕現している刀剣男士たち、特に初期刀や初期鍛刀に比べれば新戦力である彼らとの練度の差が大きくなりすぎる。また一から彼らを育てていかなくてはならない大変さを政府は理解してくれているのだろうか? 人間のような性格を持ち、それぞれに個性がある彼らをまとめ、人型での生活環境に適応させて、結果を出すことができる人間がそう多くないことも私は知っている。せめて愚痴を吐き出せるような親しい人物がいればありがたいのだが、私にはそんな人間はいない。多くの審神者そうだろう。
 唯一、他の審神者と会話できるというさにちゃんなどの情報を演練なので楽しそうに語り合っている審神者がいることも知っているが、私はあそこに書かれていることは信用していないし、ほとんど覗くこともない。あの政府が自分たちにとって都合の悪いことを末端の一審神者に好き勝手に語らせるわけがない。あれはおそらく娯楽の一種なのだ。こんなところがあるのではないか、こんな扱いをされているのではないか、おそらくあの筋立てを書く専門のゴーストライターでもいるのだろう。うがった見方だと言われればそうだが、戦時下に政府にとって不利な情報を垂れ流しできる環境が整っていることがおかしいと私は感じるのだ。だから、必要のない接触は避けるべきだ、と私は考えている。
 戦時下において何よりも大事なのは戦意が低下しないこと。政府は生かさず、殺さず、私たちを利用しているのだと思う。そのために、あんなものまで用意して、私たちの心をコントロールしているのだと思う。
 あそこで語られている、ブラック本丸に、見習い乗っ取り。ありえない。
 いくら見目麗しくても、人間のように見えても、付喪神は付喪神。たかが人間風情がどうこうすることなどできはしないだろう。それにこんな先の見えない戦争に政府高官が己の子供を差し出したいと思うものか。それでも万が一でも美しさに惑わされて噂に聞くような呪具まで使い、本丸を奪うことは無理だ。それに人間と刀剣男士が恋仲になったとしても、それは異種婚となる。大昔から、神が人間と結ばれる話にはろくな結末しかない。神と人の婚姻は人の死、もしくは永遠の別れで終わるのが古事記の昔から語り継がれてきたことではないか。そんなこと、私たちより政府の人間の方がよくわかっているだろう。しかも本丸があるのは戦場だ。安全な所なんてどこにもない。それなのに、わざわざ生贄のように付喪神と共に暮らし、素人ながらも戦場の指揮を取らなくてはならない。そんな場所を欲しがるものがいるわけなんてない。少なくとも、私は欲しくなんてなかった。
 ここは最も死が近い場所で、最も孤独な場所だ。そんな場所に選ばれた人間として何不自由なく生活してきた者が耐えることなんてできるわけない。ここはセキュリティが完全に完備された屋敷でも、百貨店の外商がご機嫌伺いにも来られない場所なのだから。人間はたった一人、従えるのは刀の付喪神たち。ゲートを一歩でれば、そこは戦場だ。甘やかされた人間が耐えられる場所などではない。だから、乗っ取りなどあり得ない。いや、望んでもさせないだろう。誰だって自分の身内は可愛いものだ。
 それに政府の管狐であるこんのすけだって審神者の味方などではない。管狐とは憑きもの筋の家に憑くものだ。ならば、こんのすけが憑いている家とは政府だ。管狐は憑いたものが望むのを与えるのだ。だから、こんのすけは政府のために審神者の味方をするだけだ。審神者が逃げ出さないように、審神者が死んでしまわないように、まるでこんのすけだけが審神者の理解者であるように行動しながら、あの大きな瞳で政府のために管狐は審神者に憑いているのだろう。
 憑き物筋に詳しい審神者ならだれもが口にはしない真実。なら、管狐や付喪神に囲まれて戦場に立つ私たち審神者を、だれが味方をしてくれるのだろう。護ってくれるのだろう。
 長い、長い、手入れ時間が終わるのを待ちながら私は考える。
 だからこそ、人に会うことが恐ろしい。焦がれるほどに待ちどうしいのに、同じ人間をこんな場所へ落とす役目を担うことが厭わしいのだ。

Side:見習い

 審神者という仕事をほとんどの人は知らない。
 毎年、決められている健康診断に内容がよくわからないものが加わったのはいつ頃だろう。その頃から、変な噂をネットやツイッターで噂を訊くようになった。健康診断をした後に行方不明になる人間がいるって……。
 でも、行方不明者がいるのはいつだって同じこと。
 仕事から逃げたい。
 人間関係が煩わしい。
 家庭問題で疲れ果てた。
 挙げていけばいくらでも理由なんて見つかる。人一人が簡単に行方不明になんてなれないし、もし健康診断の後に行方不明になるんなら、それは行方不明じゃなくて、どこか具合でも悪いところが見つかって入院でもしたんじゃないかって思うのが普通。
 けど、自分がその行方不明者になって初めて知った。国、政府って言い方の方が正しいのかな、が絡んでの集団誘拐じゃ、あたしたちにはどうしようもないってことを。
 あの朝を思い出す。
 顔もろくに見たことがない会社の上席に呼びつけられて、何をしでかしたんだ、と蒼い顔をしていた上司。彼の方がうらやましいと思う日来るなんて思ってもいなかったよ。
 呼びつけられた立派な応接室で、私は『時の政府』の役人とものが存在していることを初めて知った。
 戦争? 時間遡行軍という名前のテロリスト? これからあたしは養成所で訓練を受けて、審神者という名前の指揮官になって前線の基地へ送られることを知らされて、パニック状態にならなかったことだけ、あたしはましな方なのかもしれない。
 あたしに拒否権はなかった。あたしの会社での存在は残る、だけど、これからあたしは特別な委託業務を受けて出張所へ移動となる。そう、話の中にあった本丸というやつだ。そこから家に帰ることもできないし、特別な場所だから連絡もできない。行方不明になるために与えてもらった時間は一週間だった。アパートの解約手続きや書類関係は会社や役所で対応してくれただけありがたいのかもしれない。だが、あたしはもうアパートへ帰ることはできない。私物は持ち込んでも問題がないかどうかを徹底的に政府が調べて、本丸へ持ち込みできるものは渡されるが、それ以外は政府がすべてを預かることになる。
 こうして、あたしは行方不明者となった。笑えるほど、簡単に……。
 そして、養成所での研修を終えた私は最後の試験といえる本丸での見習い研修が始まる。今回は受け入れてくれる本丸が少なかったということで一人の男性と一緒に同じ本丸で研修を受けることになった。
 初めて出会った彼はまるで会社で名刺交換をするかのように私に向って軽く会釈をするとこう言った。
「千葉という」
 真名をあっさりと名乗る彼に絶句するあたしに彼はこう言った。
「これはただの地名だ。ところで君はなにかミュージックを持っていないか? 私の持っているipodにはジミー・ヘンドリックスの曲が入っていないんだ」
続く

 参考文献
「死神の精度」「死神の浮力」伊坂幸太郎 文春文庫
「憑霊信仰論」小松和彦 講談社学術文庫


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