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幸福の名前 

2014, 08. 19 (Tue) 21:43

 モードレッドが一番好きです。あのラストシーンの『ただいま』はキュン死にするかと思った(*^_^*)
 なんなんだ、この可愛いいきものは! 一番人気なのはわかりますわぁ。で、モードレッドが一番幸福に思うことって何だろうと考えてこんな話になりました。原作で可哀想な分、ここでは幸せでいてほしいなぁ。で、オトメイトさん、FDまだですか?
幸福の名前

 だれにもかまわれたことのない子供だった。
 魔族の血を引いているのになんの役にたたない子供。しかも母親からその命を奪いとって産まれた忌み子。
 それでも、この朽ち果てて行こうとする王国を引き継いでいくのは彼だけで……。
 だから、愛情以外のものは必要に応じて与えられた。
 心のないそれはとても冷たかった。言葉はただの手段で、与えられるものはいつか彼の元へやってくる哀れな花嫁を迎えるためだけのもの。
 この王国はいつだって冬のままで、モードレッドが求める春はいつまでたってもやってはこなかった。
 あゝ、笑顔を初めて時の風景をいまも鮮やかに思い出すことができる。いつも無表情で彼に接する侍女が溢れんばかりの笑みを浮かべて小さな子供に笑いかけていた。あれは彼女の子供なのだと、お前にはあたえられないものなのだ、と傍でそんな 悪意に満ちた囁きを呟いていたのは父だった。
 母親、という言葉を初めて知った。
 笑顔、を初めて知った。
 そうか、と幼心に納得をした。自分は本当ならあんな風に笑いかけてくれる人を殺してしまったのだ、と……。
 だから、モードレッドの所には永遠に春なんてやってこない。春は祝福されたものだけにやってくるものだから、不幸を友とした自分の元へは永遠にやってくることは、ない。
 全ては自分の罪のために、モードレッドは孤独と不幸を友にして歩んでいかなくてはならない。それが定められた自分に出来る唯一の贖罪なのだと、周囲の者が言う。モードレッドは思う。
 そして改めて知る、幸福など自分の世界には存在していないのだと。
 だから、裏切りと偽りを不幸同様に友として歩むしかなかった。

 白んだ朝に昔の夢を見て、モードレッドは飛び起きた。孤独だった長い日々の思い出。
「嫌な夢だったな」
 既にモードレッドの故郷はない。反乱を起こした父親はその罪を償っている。一度は王たる者に剣を向けた身でありながら、こうしてまだ円卓の騎士でいることの幸いを味わいながら、モードレッドは起き出した。
 まだ朝は早い。だが、あの悪夢に取り込まれてしまわぬように広い空を見つめたかった。もしたわいないこの小さな願いが叶うならば彼女の笑顔を一番に見たい。
 小さな願いだ。そんなことを想うだけで胸が高鳴る。そう幸福の形をようやくモードレッドは見つけた。
 ただ彼女を護り、彼女の剣と楯になろう。それだけが願い。
 騎士の塔を出れば、天上に紫紺の空が広がる。まだ夜明けは遠い。その中に煌めく一筋の光。まるで彼女のようだ。いつだって、こうしてモードレッドを照らし続けてくれるだろう。
 その時―――。
「モードレッド! おはよう!」
 声が響いた。誰よりも愛しい声音。
「アル!」
 それは朝のあいさつという名前の幸福。
Fin
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