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選定の未来 

2014, 07. 07 (Mon) 04:56

 私は共通√が一番好きだったりします。正しい乙女ゲームの楽しみ方ではないと思いますけど(笑)
 でも、等身大の女の子であるアルが悩んで、みんなからの忠誠を勝ち取るまでの物語がいいのです。そこへ至るまでマーリンは黙って見ていたんじゃないかなと思って書いてみました。私の中では一番姫王に厳しいのは彼なんじゃないかな。そうあって欲しいというは私の希望♪
選定の未来

 直接、命を狙われることなどよりも、見知らぬ人の心の闇から聞こえてくる声がアルを傷つけた。
  王に選ばれたくて、選ばれたわけではない。
 これは間違えなのだと、何度も歴代の王の相談役だったマーリンにも訴えた。でも、聞き届けてはもらえなかった。
 それでもランスロットやボールスの言葉に、前を向いて歩んでいこうと決めたのだ。
 けれど、その心を何度も抉る、些細な言葉。
 自分が至らないことなんて、自分が一番わかっている。
  王に相応しくないことなんて知っている。
 それでも前を向こうと伸ばした背に投げつけられる心ない悪意という名の礫。
 唇を嚙み締めて笑う向こう側に涙を隠していることを、誰かに知っていてほしいと願ってはいけないなんてわかっている。それでも……。
 胸を突く、胸を抉る。
 一体、どうしろというのだ!
 自分は望んで選定の場に行ったわけではない。選定を受けるつもりもなかった。
 自分を選んだのは聖剣だ。
 時間を巻き戻せるならば、あの時まで巻き戻してほしい。
 誰もこない図書室の隅で、涙をこらえながら、アルは思った。
 けれど涙がポツリ、ポツリとアルの膝に染みを作る。ひくとしゃくりあげそうになった咽喉を無理やり押さえつけた。そのまま、アルは本を抱きかかえたまま、膝を抱え込んで、それを堪えるうちに泣き寝入りしてしまった。
☨ 
「まだ、ここに本当の意味での君の味方はいない」
 アルしか知らないその場所に漆黒を纏った姿がふぁわりと浮かびあがった。その影は幼い少女が泣きながら眠る姿を淡々と見つめていた。
「それは君が自分の手で掴みとらなければ意味がない。聖剣が君を選んだとしても、そこから先は君が決めた道だ。だから、私もまだ君の味方とは言えない。君がここで折れてしまっても、私は構わない。そうであれば君の治世が短くなるだけのこと。そう君は聖剣の意志に呑みこまれただけだったということだ。だが、君が自らの手で数多の試練を乗り越えることができた、その時は……」
 その先の言葉が続くことはなかった。そのまま影は闇に溶けて消えた。

 アルが城を出奔するのは、この数時間後のこと。
 この日、少女が出会う二人の人物が彼女を導くことになることを誰もまだ知らない。
 そう……。
  この日こそが、一人の町娘が王になるというただのお伽話が、偉大な姫王誕生という伝説の始まりと変わる真実の選定の日となるのだ。
Fin
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